2026年10月01日

不動産売買契約において、売主が背負うリスク?

「家を売った後、もし設備や建物に何かの不具合が見つかったらこちらでで直さなきゃいけないの?」


自宅の売却を考えるとき、引き渡し後のトラブルが不安な売主様がほとんどだと思います。


調べている方は既にご存じの方も多いと思いますが、2020年4月に民法改正によって従来の「瑕疵(かし)担保責任」から「契約不適合責任」へと刷新され、売主が負う責任の範囲や買主側の権利がより明確かつ強力になりました。


この内容を知らず、対策を講じずに売却すると、引き渡し後に修繕費用や損害賠償を請求されたり、状態によっては契約解除となるケースもゼロではありません。


今回は、不動産の売主が知っておくべきリスクと、身を守る「物件状況告知書」の記載方法や「免責特約」内容のポイントを改めて解説します。

1. 「瑕疵担保責任」、「契約不適合責任」とは?

2020年民法改正以前の「瑕疵担保責任」では、「隠れた欠陥(買主が注意しても気づかなかった欠陥)や不具合」についてのみ売主や施行者が責任を負うルールでした。

現行民法における「契約不適合責任」の基準はシンプルです。

「引き渡された不動産が、売買契約書の内容と一致しているかどうか」 

で、つまり「欠陥が隠れていたかどうか」ではなく、「契約書内容と異なる状態であったかどうか」ということになります。

具体例としては
 
・種類が違う・・・・頼んだエアコンと違うメーカーの物が付いていた
・品質が悪い・・・・購入した中古住宅に、契約書に記載のない雨漏りやシロアリ被害の跡があった
・数量が足りない・・ 10個購入したはずなのに8個しかなかった

買主側が請求できる4つの権利

契約と異なる不具合が見つかった場合、買主は売主に対して以下の請求が可能です。


1. 追完請求(補修・修補の請求):雨漏りやシロアリ被害などを直すよう求める


2. 代金減額請求:補修に応じない場合、その分売買代金を安くするよう求める


3. 損害賠償請求:補修期間中のホテル代や被害拡大に伴う損害などの補償を求める


4. 契約解除:住む目的が果たせないほど重大な不具合の場合、契約自体を白紙に戻す


以前と比べ、「代金減額請求」が加わるなど、買主側の救済手段が一段と強化されています。

2. 売主が負う「損害賠償リスク」の具体例

実際に売主が責任を問われやすいのは、主に以下のようなケースです。

・ 雨漏り・給排水管の水漏れ

 
引き渡し直後に天井からの漏水が発覚。天井やクロスの張り替えに加え、家具の汚損に対する賠償が発生。


・ シロアリ被害・主要構造部の腐食

 
床下の柱がシロアリに侵食されており、補修や補強工事に数百万円規模の費用が発生。


・ 心理的瑕疵(過去の事故・事件・火災など)

 
過去の事故死や重大なトラブルを伝えておらず、買主から契約解除や大幅な代金減額を求められる。


・ 境界の越境・地中埋設物

 
更地渡しや建替え前提の土地売買で、地中から昔のコンクリートガラや浄化槽が見つかり撤去費用を請求される。
 
 
また、マンションで多いのは 
 
・専有部分の面積不足(数量の不適合) 
 
パンフレットや売買契約書に記載されていた面積よりも、実際の面積が少なかったというケース。 
 
 
・騒音や悪臭、近隣トラブル、近隣に反社会勢力の事務所など(環境の不適合) 
 
物理的な欠陥だけでなく、快適な生活が送れないようなことも責任対象になる事があります。 

3. トラブルを未然に防ぐ売主の2大防御策

防御策①:告知書(物件状況確認書・付帯設備表)にありのまま書く

最大の防御策としては、築年数が古いなど、気になる箇所がある場合は、売却活動を始める前に建物や設備の調査(インスペクション)を行い、もし不具合があれば売主自身がその内容を認識しておくということです。


資金に余裕があれば修理したり、リフォームして売り出すのも良いでしょう。


また、不具合があっても、そのままの状態で売り出したいという売主の方もいるので、その場合は事前に説明した上で売却価格を設定しましょう。(買主はこれから住むので、補修費用がかかることを加味して)


【※もし不具合を隠して販売活動を始めても、買主が物件を調査するとすぐに分かるので結局値引き交渉になったり、これが原因でせっかく申し込まれた買付が白紙になったり、良い事はないです。】


そして一番大切なのは、売買契約時には、調査した又は知っている不具合や過去の修繕歴を、契約書・告知書に余すことなく記載することです。


契約不適合責任は「契約した内容と食い違っていること」に対して発生します。


「雨漏りの跡がある」「給湯器が故障している」「過去に床下浸水したことがある」ときっちり書類に明記し、買主が納得したうえで契約しました、としていれば、引き渡し後にその件で責任を追及されることはありません。


「マイナス情報を書くとまず売れないのでは?」と隠すのが一番危険です。些細な違和感でも不動産会社へ包み隠さず伝え、告知書へ反映させましょう。

防御策②:「責任期間の短縮」または「全部免責特約」を設定する

また、個人が売主となる中古物件の売買では、法律の規定を特約で変更することが認められています

(※宅建業者が売主の場合は免責不可です)

〇責任期間を「引き渡し後3ヶ月」に限定する(一般的)

法律上、買主が不具合(契約不適合)を知ってから1年以内であれば通知可能ですが、これでは売主がいつまでも不安を抱えることになります。


そのため実務上は「主要部位に限り引き渡し後3ヶ月間のみ対応する」といった特約を結ぶのが標準的です。


〇契約不適合責任を「免責(一切負わない)」にする

築年数が古い戸建てや古家付き土地の場合、「建物の契約不適合責任を免責とする(現状有姿渡し)」という条件で売り出すケースも多くあります。


ただし、買主のリスクが上がるため価格交渉(値下げ)が入りやすくなります。


また、「売主が知っていたのに告知しなかった事実」については特約を結んでいても免責されない点に十分ご注意ください。
 
 
※しっかり物件を調査した上で、「リスクヘッジ」として 特約を設定されることをおススメします。


通常、このような特約はご自宅等の中古不動産を売却する場合、仲介を担当する宅建業者側から事前に説明があるかと思いますが、ない場合は尋ねてみてください。
 

4. 近年の法実務トレンド:インスペクションの活用

前項でも記載しましたが、近年の中古住宅流通では、契約前の「建物状況調査(インスペクション)」の活用が既に定着しています。


専門の建築士が建物の基礎・外壁のひび割れや雨漏りリスクを客観的に検査するため、以下のメリットがあります。
 

・売主自身も把握していなかった建物の状態が事前に把握でき、告知漏れを防げる


・検査基準を満たせば「既存住宅売買瑕疵保険」に加入でき、万が一不具合が見つかっても補修費用を保険でカバーできる(※金額上限有)


・買主側も安心して購入できるため、成約率の向上や価格維持につながる
 
 
・ 買主は税制優遇が受けられるので、こちらも成約率の向上につながる
(住宅ローン減税など※変更の場合もあるので、最新の情報を調査してください)

 
 

まとめ:「不具合を正しく開示すること」が最高の自衛策

・必要に応じてインスペクションで客観的な状態を把握する


・過去の修繕や気になる症状はすべて告知書に記載する


・個人間売買に適した責任期間(または免責)の特約を正しく設定する


 契約不適合責任への対策で最も重要な鉄則は、「売却を考えた時に、まず最初に物件状況をきちんと把握する」
、次に「もし不具合や故障個所があった場合は修理するか、その上で価格設定をする」、そして「確認した状態を必ず契約書に落とし込むこと」です。


信頼できる不動産会社と綿密に状況確認を行い、引き渡し後も安心して新生活を送ってください。

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