2022年12月15日

土地、建物の所有者、取得者、共有者必見!

令和5年4月1日から施行の改正民法!主な改正項目について確認しましょう。

土地・建物に特化した財産管理制度の創設

いわゆる所有者不明であったり、適切な管理がなされていない土地・建物は、これまで適切にこれを管理するための「財産管理制度」がなかったことから、公共事業、民間取引の阻害や近隣への悪影響につながっていたため問題視されてきました。

令和5年度より、これらの課題を解決する新たな清楚が設けられます。

A,所有者不明土地・建物の管理制度

所有者が不明の土地・建物に関して、「利害関係人」(行方不明の状態が続くことで、損害を受ける対象の人)が地方裁判所に申し立て、所有者不明土地・建物の管理人を選任してもらえるようになります。
この管理人は裁判所の許可を得ることで、当該土地・建物を「売却」することも可能です。

B,管理不全状態にある土地・建物の管理制度

所有者が適切な管理をしていないために、他人の権利が侵害される可能性のある土地・建物について、利害関係人が地方裁判所に申し立てて管理人の選任をしてもらえるようになります。

具体的にはこれにより、倒壊の恐れのある建物、擁壁などの補修工事やゴミ屋敷のゴミ撤去・害虫駆除等を管理人に依頼することが出来るようになります。

土地・建物の共有制度の見直し

これまで、土地・建物に関して共有者に所在不明な人がいた場合、その土地・建物の利用について共有者間で意思決定が出来なかったり、処分できずに、公共事業や不動産取引などで様々な阻害原因となっていました。

そこで、共有物の利用や共有関係の解消をしやすくするため、制度全般について見直しが行われます。

①共有物を利用しやすくするための見直し

・売却・増改築等、共有物の変更には共有者全員の同意が必要とされるのが原則ですが、著しい変化を伴わない軽微な変更に関しては、共有持ち分の「過半数」で決定できるよう緩和されます。
(例:砂利道のアスファルト舗装、建物外壁、屋上防水の大規模修繕)

・短期(建物3年以下、土地5年以下)の賃借権設定については、共有者の「過半数」で決定できることで見直されました。
(※ただし、借地借家法の適用のある賃借権の設定は約定期間内での契約終了が確保されず、結果短期ではなくなる可能性があるので、共有者全員の同意が必要です。)

・所在不明の共有者がいる場合、他の共有者が地方裁判所に申し立ててその決定を得ることで、残りの共有者の同意のみで共有物の管理・変更が可能となります。

・所在不明の共有者がいる場合、他の共有者は、地方裁判所に申し立ててその決定を得ることで、その不明共有者の持分を取得したり、その持分を含めて不動産全体を第三者に譲渡することが出来るようになります。

遺産分割に関する新ルールの導入

現在、相続の開始により不動産、預金などの遺産は一時的に法定相続人全員の遺産共有状態となります。

しかしその後、遺産分割がなされないまま長期間放置されることも多く、そうなると遺産の管理や処分が大変困難になります。

※遺産分割においては寄与分(被相続人の財産の維持や増加に貢献した場合に、他の相続人よりも相続財産を多く分けてもらうことができる制度)や特別受益(相続人の中に、被相続人から遺贈や生前贈与によって特別の利益を受けた者がいる場合に、その相続人の受けた贈与等の利益のこと)を考慮した具体的な相続分を算定するのが一般的ですが、長期間放置されるうちにその証拠が亡くなってしまう問題も出てきています。

さらに重ねて、相続人の一部が所在不明となり所有者不明土地が生じるということも多いため、「早期の遺産分割」を促進する仕組みが新たに設けられました。

①相続開始10年経過後の遺産分割のルール

被相続人の死亡(相続の開始)から10年を経過した後に行う遺産分割は、寄与分・特別受益の主張が出来ず、原則として法定相続によることとなります。

②改正法の施行前(R5.4.1以前)に相続が開始した場合の遺産分割の取り扱い

改正法施行日前の相続についても、改正法による新ルールが適用されます。
ただし、経過措置により猶予期間が設けられているので「相続開始から10年経過時」または「改正法施行日から5年経過時」のいずれか遅い時が具体的相続分による遺産分割の期限となります。
まとめ

改正点では、一部従来の権利が制限される内容も含まれております。共有不動産をお持ちの方、開始された相続に関して遺産分割が出来ていない方は、改正法施行前に現在の問題点を解消しておくことが望ましいでしょう。 
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